結論からお伝えすると、薬と食べ合わせで特に気をつけたいのは、ワルファリン(血液をさらさらにする薬)と納豆、カルシウム拮抗薬(血圧の薬)とグレープフルーツ、骨粗しょう症の薬や一部の抗菌薬と牛乳の3つです。いずれも薬の効き方が変わるおそれがあり、避けるか、飲む時間をずらす必要があります。

ただし、注意が必要なのは「全部の薬」ではありません。多くの食べものは、いつもどおりに食べて問題ありません。大切なのは、自分が飲んでいる薬に関係する組み合わせだけを知っておくことです。

薬と食べ合わせとは?

薬と食べ合わせとは、食べものや飲みものが、薬の効き方を強めたり弱めたりすることです。正式には「薬物相互作用(食物との相互作用)」と呼ばれます。

起こり方は、大きく3つに分かれます。

  1. 薬のはたらきを打ち消す(例: ビタミンKが多い食品とワルファリン)
  2. 薬が分解されにくくなり、効きすぎる(例: グレープフルーツとカルシウム拮抗薬)
  3. 薬が吸収されにくくなる(例: カルシウムと骨粗しょう症の薬・一部の抗菌薬)

3つめの「吸収されにくくなる」は、食べること自体が悪いのではなく、同じ時間にとることが問題です。時間をずらせば、どちらもふだんどおりにとれます。

気をつけたい組み合わせ一覧

よく処方される薬について、代表的な組み合わせをまとめました。薬の名前は商品名の一例です。

薬の種類(例)気をつける食べものどうするなぜ
血液をさらさらにする薬(ワルファリン)納豆・青汁・クロレラ納豆は食べない。青汁・クロレラも飲んでいる間は控えるビタミンKが非常に多く、薬のはたらきを弱める。納豆は腸の中でビタミンKが作られ続け、薬を打ち消すはたらきが数日続くという報告もあるため、少量でも避ける
同上ほうれん草・ブロッコリー・モロヘイヤ・パセリ・春菊量を急に変えないビタミンKが多め。急に増やしたり、まったく食べなくなったりすると効き方が変わる
血圧の薬(カルシウム拮抗薬)グレープフルーツ・文旦・スウィーティージュースも含めて控える薬が分解されにくくなり、血圧が下がりすぎることがある。ただし同じ仲間でもアムロジピンは影響を受けにくいことが報告されている
骨粗しょう症の薬(ビスホスホネート)牛乳・ヨーグルト・チーズ・硬水服用時は水で。飲んだあと30分は食べないカルシウムと結びつき、薬が吸収されない
一部の抗菌薬(テトラサイクリン系・ニューキノロン系)牛乳・ヨーグルト・チーズ・小魚薬と同時にとらない。あける時間は薬剤師・医師の指示にしたがうカルシウム・マグネシウムと結びつき、吸収されにくくなる。同じ系統でも薬ごとに影響の大きさが違うので、自分の薬については薬剤師・医師に確かめる
甲状腺ホルモンの薬(レボチロキシン)大豆製品・食物繊維の多い食品・牛乳空腹時に水で飲む(起床時なら30分〜1時間あけて食事。寝る前に飲んでもよい)一緒にとると吸収されにくくなる。鉄剤や酸化マグネシウムなど、金属を含む薬と同時に飲んだときも吸収が落ちる
むくみ・血圧の薬(カリウムを残す利尿薬/スピロノラクトンなど)バナナ・アボカド・いも類・トマトジュース・減塩タイプの塩腎臓のはたらきが落ちている方は、一度にたくさんとらない腎臓のはたらきが落ちていると、カリウムがたまりやすく、多すぎると脈が乱れることがある。腎臓のはたらきが保たれていれば、余分なカリウムは尿として出されるため、ふだんの食事で問題になることはまれ
糖尿病の薬(スルホニルウレア薬・グリニド薬)お酒空腹での飲酒を避ける。空腹のまま薬を飲むことも避けるどちらもインスリンを出させる薬で、血糖が下がりすぎることがある。料理に使う少量のお酒やみりんは、加熱すれば問題ない

同じ系統の薬でも、一つひとつの薬によって影響の大きさは違います。表は代表的な例なので、ご自分の薬については薬剤師・医師にご確認ください。

出典: 各薬剤の添付文書(医薬品医療機器総合機構 PMDA)、厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」

医師からのひとこと:3つに分けて考える

薬と食べ合わせは、次の3つに分けて考えると整理しやすくなります。

1. 完全に避けるべきもの。代表は、カルシウム拮抗薬(降圧薬の一部)とグレープフルーツです。果汁が薬を分解する酵素(CYP3A4)の働きを抑え、血中濃度が上がりすぎて血圧が下がりすぎることがあります。この種の組み合わせは「たまになら大丈夫」とは言えないので、処方時にしっかり確認する必要があります。

2. 量を急に変えなければよいもの。代表は、ワルファリンと納豆・青汁などのビタミンK含有食品です。ワルファリンは納豆(納豆菌がビタミンKを産生します)を避けるのが原則で、青汁や緑黄色野菜は、毎日ほぼ一定の量であれば調整が可能です。こうした食品を「食べない」ことより、摂取量が日によって大きく変動しないことが大切です。

3. 時間をずらせばよいもの。代表は、一部の抗菌薬や甲状腺ホルモン薬と、乳製品・ミネラル(カルシウム、鉄など)の組み合わせです。同時に摂ると薬の吸収が落ちるため、服用間隔をあけることで対応できます。

見分け方のコツは、「自分の薬が3つのどれに当たるか」を自己判断せず、お薬手帳を見せながら医師・薬剤師に確認することです。同じ薬でも、薬の種類や量、体質によって対応は変わります。

そして、食事を気にするあまり自己判断で薬をやめてしまう方には、「食べ合わせが不安なら、薬をやめる前にまず相談してください」とお伝えしたいです。高血圧や糖尿病、不整脈の薬を急にやめると、病状の悪化や合併症のリスクがあります。ほとんどの場合、食べ合わせの問題は「やめる」のではなく、「量を一定にする」「時間をずらす」「別の薬に変える」といった方法で解決できます。気になる食品があるときは、遠慮なく主治医や薬剤師にお尋ねください。

五藤 良将 医師(医療法人社団五良会 竹内内科小児科医院 院長/内科・糖尿病内科)

よくある誤解

「納豆は少しなら大丈夫?」

ワルファリンを飲んでいる場合、少量でも避けてください。ほかのビタミンKが多い野菜と違い、納豆は腸の中で納豆菌がビタミンKを作り続けるため、食べた量以上の影響が長く残ります。

「みかんやオレンジもだめ?」

グレープフルーツで注意が必要な成分は、みかん・オレンジ・レモンにはほとんど含まれません。みかんやオレンジは、ふだんどおりで大丈夫です。文旦・スウィーティー・ばんぺいゆは、グレープフルーツと同じ仲間なので控えます。

「ほうれん草も一生食べられない?」

いいえ。ワルファリンで本当に大切なのは、量をいつもと同じくらいに保つことです。毎日小鉢1杯食べていた人が急にやめても、効き方が変わります。「食べない」ではなく「いつもどおり」が正解です。

「減塩タイプの塩なら安心?」

血圧のために減塩を心がけるのはよいことですが、減塩タイプの塩はナトリウムの代わりにカリウムが使われているものが多くあります。カリウムを残す利尿薬や、腎臓のはたらきが落ちている方は注意が必要です。ふだんの塩分の減らし方は塩分を摂りすぎていませんかもあわせてご覧ください。カリウムの多い食品についてはカリウムの話でまとめています。

自己判断で、薬をやめたり減らしたりしないでください

この記事は一般的な注意をまとめたものです。実際にどうするかは、処方した医師・薬剤師にご確認ください。

  • 「この食べものがだめなら、薬をやめよう」と考えないでください。薬を急にやめると、もとの病気が悪くなることがあります。
  • 市販薬・サプリメント・健康食品も、飲み合わせの対象になります。お薬手帳にまとめて記録し、受診のときに見せてください。
  • 新しく薬が増えたときは、食事で気をつけることが変わる場合があります。そのつど確認しましょう。

よくある質問

Q. 食べてしまったことに気づきました。どうすればいいですか?

一度食べただけで、すぐに大きな問題が起きることはまれです。あわてずに、次の受診のときに医師・薬剤師へ伝えてください。体調の変化(出血が止まりにくい、ふらつく、強い眠気など)があるときは、早めに連絡してください。

Q. サプリメントは食べものより安全ですか?

いいえ。むしろ成分が濃いぶん、影響が大きいことがあります。青汁・クロレラ・セント・ジョーンズ・ワートなどは、薬との飲み合わせで知られた注意点があります。飲む前に必ず相談してください。

Q. 家族の分もまとめて献立を考えています。どうすればいいですか?

避けたい食材を家族全員の食卓から外す必要はありません。その方の取り分だけ別にする、たとえば納豆を本人以外の朝食に出す、といった形で十分です。MEGURUでは、飲んでいる薬を選んでおくと、レシピの材料に気をつけたい食べものが含まれるときにお知らせします。選んだ内容は端末の中だけに保存され、サーバーには送られません。

本記事は一般的な情報提供であり、診断・治療を目的とするものではありません。治療やお薬については、必ず主治医・薬剤師にご相談ください。